今昔物語 第四拾参 NOW!

 今となっては昔の話だが、いつだかのとき。
割といい仕事に就いていた女がいた。
若い頃はイケイケで美しく、ナンパされがちだった。
そのうちに
ベビーシッターをする様になり
そうやって
育てた子は僧侶となった。
老後は
法華経に凄くハマった。
話をききにいったりと熱心なおばあちゃんになった。
 
 あるとき、おばあちゃんが話を聞きにいった帰り道。
ひどく雨がふってきた。
雨宿りに入った、閉店している店の屋根で立っていると
横で一人の女が泣いていた。
おばあさんが
「何を泣いとるんだい?」
女は
「実は去年付き合ってた男と今年付き合ってる男に結婚をしてくれと言われているの。」
よく見るとその女の後ろには2人の男がまだかまだかと答えを待っている。
「私は貧しいから、絶対に幸せになりたいの、一人は会社の社長なの、もう一人はこのへん一帯の地主なのよ。けど、一人しか選べないじゃない。それが悲しくて悲しくて、私の美貌って一人だけしか手に入れられないじゃない?」
これを聞いたおばあちゃんはあわれに思い
「では、一人を私にください」
というと
「そうして、ください。私は2人とも幸せになってほしいの。」
と言って与えてくれた。
男を一人連れて帰って
一緒に住む事に
したものの
男と遊んだのなんて、ン10年もまえの話。
「ああ、連れ込んだものの、私にはもう張りも色気もないのう。」
と弱った。
自分のしなびた乳を一晩中吸わせているうちに、
法華経さま、私は長い事読んでおります、この男は、幸せにしてほしいという女から引き取った者でございますが、なにぶん、私は歳をくって、乳たればあさんじゃが、どうか、どうか、乳を張らせておくんなまし。」
と心を込めて念じたところ、
子を産まなくなって長いばあさんの乳は若い頃の様に張って、乳がこぼれてきた。体中のしわも張ってきて、男を自由に扱う体を手にする事ができた。
 
「この様な不思議な有り難い事がある」とおばあさんが語ったのを世の女性はいざとなったらやってみましょうよ、とかたり伝えている。




参考文献
今昔物語四十三