ヌクにヌケないオンナ

 駅からの道。
歩く夜道
人々は明日のために帰路へつく。

それは
決まりきったシステムの様に。


それはワタシにも例外ではない。
このまま
じいさんになるまで
こうやって
こうやって
この道を歩いていくんだろうなと
つくづく
思うような日々だ。


そんな日々でも
やっかいな
ことがある。

それは
目の前をあるくオンナの
存在だ。

ワタシには
家庭が
あるというのに
彼女は
ワタシに
変な感情をわきたてさせる。


どうして
そんなに
ワタシを
くるしめるのだ。


この苦しみは
彼女が
左へまがった
ことで
解消された。

ワタシは曲がらず
まっすぐに
行くからだ。


そして、
家族のもとへ
あたたかい
夕飯
この
夕飯に
無事たどり着けた事に
感謝を
し、
眠りについた。


そして
次の日の朝。

いつもどおり
駅へ向かう。
ワタシは
この地域の中でも
早く出なければならない
人間のようで
道には
いつも
人が誰もいない。


何事も
ないように
時は進み

帰路へつく
すると
また
あの
オンナだ。

なぜ
いつも
ワタシの
目の前を通るのだ。
あの
改札をでて
ひとの入り乱れる中
常に
ワタシの
前を
確実に確保している
お前のせいで
どれほど
悩んでいる
のか
伝えたいほどだ。


とりあえず
この状況を受け止め
歩みをすすめる

彼女は携帯電話でなにやらポチポチと
して
いる
いつもの事だ。

彼女の歩く速度が
遅いせいで

距離感が
変な具合になっていく

これが
嫌なのだ。
これが
わたしの
幸せな
家庭を奪うであろう
魔の様な
もの。


わたしは人を追い越す事が
苦手だ。
おいこしておいて
あとから
おいこしたあいてが
わたしを
おいこしたら
どうしよう
などと
無駄な心配をいつだってしている。
車だって車線変更
なんて
いつも
心臓が締め付けられる。
バスの後ろについたときも
追い越すことなんてない。
そんな人間だ。



しかし、
この変な距離感は
まずい
たのむから
速度を上げてくれ
そう
願うばかりだ。

ワタシの
後ろに
いた
おばはんは
すぐに
わたしを
追い越して
いった。

あの勇気
あの姿勢 

わたしにはないんだ。

下手をすれば
もう
彼女の
かかとを
踏みそうだ。

そして
何より
怖いのが
この距離感
から
彼女が
ワタシを
ストーカー
だと

そのたぐいに
決めつけ
ラレル可能性

ある事だ。


圧倒的に
不利なのは
ワタシ
なんだろうな
オトコというのは
こういう面で
残念な存在だ。


でも
そんな
心配は
無用なのかもしれない。
メールか
何か知らんが
彼女は
携帯電話の
中にいる
他とつながる事
ばかり
気にしている。
こんな
わたしと
事件
という
名のつながり

発展しようなどという
気配は
微塵もない。


やがて
彼女は
左へ

進んでいった。


ワタシは
これで
家族のもとへ
いけるのだ。
そうおもうと
うれしくて
スキップしかけて
しまった。


きっと
彼女は
こんな
ワタシの
想いを知らない。
彼女の持つ
発言力の強さ
なんてことも
一切考えていない。

早く家族のもとへ
帰りたいという
気持ちが強くても


どうしても
ヌクにヌケない
オンナだ。